国政報告

平成26年4月10日 内閣委員会で質問

参議院内閣委員会では、数回にわたり「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が審議されています。最終日の本日、かつて全国知事会を代表し、総務常任委員会の委員長として「地方公務員の新たな労使関係制度」について民主党政権下の総務省側と意見交換などを行ってきた経験をもとに、地方公務員制度に関連させながら、自律的労使関係制度について質問しました。

自律的労使関係制度について

石井

先に成立した国家公務員制度改革基本法第12条には「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」附則第2条には「政府は、地方公務員の労働基本権の在り方について、第12条に規定する国家公務員の労使関係制度に係る措置に併せ、これと整合性をもって、検討する」とあります。この条文の趣旨と、地方公務員についての自律的労使関係制度は、附則第2条をもとに国家公務員制度に準ずる制度となるのかを、稲田大臣に伺いました。

稲田 朋美 内閣府特命担当大臣

「第12条は、政府に対し国民に開かれた自律的労使関係制度を措置する責務を課したものです。また、ご指摘の附則第2条は政府に地方公務員の労働基本権のあり方について、第12条に規定する国家公務員の労使関係制度にかかわる措置と整合性をもって検討することを求めたものです。国家公務員と地方公務員共に、地位の特殊性や職務の公共性から労働基本権の制約が許容されていることから、双方の自律的労使関係制度について整合性が求められ、附則の規定になりました。ただ、整合性をもって検討する際は、地方公務員の自律的労使関係制度について、地方の特性、また多様性を考慮することは必要かと思います。結果として、国に準ずる制度とならないということも十分に考えられるのではないかと考えております」

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協約締結権付与について

石井

引き続き、協約締結権付与の理念、目的は何なのか。現在の労使関係制度のどこに問題があり、それがどのように改善されるのか。便益及び費用をどのように考えるのか、これらが明らかにされているとは思えない。稲田大臣の見解を伺いました。また、人事院としては、この協約締結権付与について、どのように考えているか。原恒雄人事院総裁に伺いました。

稲田 朋美 内閣府特命担当大臣

「国家公務員制度改革における国家公務員への労働基本権、協約締結権の付与の趣旨について、行政の諸課題に対する対応能力の向上、また責任ある労使関係の構築といった観点から、国家公務員への協約締結権の議論がなされてきたと承知しております。便益、費用についてどうかというお尋ねですが、協約締結権を付与する職員の範囲を始め、自律的労使関係制度の具体的な制度設計に応じて変わり得るもので、現時点で便益、費用について提示をできるところにはまだ至っていないと考えております。自律的労使関係制度については、その理念、目的をどのように考えるかも含め、多岐にわたる課題がございますので、引き続き慎重に検討する必要があると考えております」

原 恒雄 人事院総裁

「自律的労使関係は、労使双方の代表がそれぞれ当事者能力を持って交渉に臨み、真摯な交渉を経て合意に達し、それぞれ責任を持って実行すること、その積み重ねで信頼関係が築かれると思います。多くの民間企業は長年にわたる労使交渉の積み重ねで自律的な労使関係ができ上がってきていると認識しております。公務において職員団体に協約締結権を付与して、労使交渉により勤務条件を定める、仮にそういった形を取った場合、国家公務員は勤務条件法定主義により法律で給与等が定められ、国会の民主的コントロールが不可欠です。使用者である大臣も、給与の最終決定権を持つ交渉当事者にはなれません。使用者と職員団体が交渉で合意しても、国会で仮に異なる判断が行われれば合意内容を実施できず、そうなれば、正常な労使関係を保てません。また、民間企業は、企業の利益の分配をめぐり、経営上のリスク等を勘案しながら労使双方がぎりぎりの交渉を経て合意し、給与が決定されます。しかし、公務員は民間企業労働者のように利潤の分配を求める立場になく、倒産等の市場原理も働かない。その中で公務の労使交渉を行いどう合意に至るか、大変な困難が伴うと思います。協約締結権を付与して労使交渉により勤務条件を定める労使制度、かつて私が所属をしました国鉄を始め三公社五現業に適用された制度と全く同じです。しかし、この労使制度は、最大の労働条件である賃金交渉について長年にわたり全く機能せず、労使による自主的な解決には至らず、公労委の仲裁によって長年続けてきたといった歴史的な事実がございました。これについても検証する必要があると考えます。公務における自律的労使関係制度は、いろいろな論点がございます。先日のこの委員会で問題提起されましたが、私が人事官並びに総裁として在任させていただいた八年間、立法府において協約締結権をめぐる基本的な論議はほとんどなされていないと認識しています。協約締結権の付与について、大臣も御答弁されましたが、慎重に検討する必要があると思っています」

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地方公務員の自律的労使関係制度について

石井

同様に地方公務員について、総務省はどのように考えているか。伊藤忠彦政務官に伺いました。

伊藤 忠彦 総務大臣政務官

「石井委員におかれましては、岡山県知事時代に全国知事会で地方公務員労使関係制度ワーキングチームのリーダーとして精力的にお取り組みをいただきましたことに改めて深く敬意を申し上げたいと思います。平成23年の12月と平成24年の5月に総務省からお示しをした資料では、地方公務員の自律的労使関係制度に関し、理念、目的については、新たな行政課題に対応し、主体的に人事制度に取り組むことができる仕組みとすること。便益及び費用は、新たな制度の下、労使双方の努力や労使関係の成熟によって変わると整理されています。これにつきましては、当時、全国知事会からも、現行制度を見直す理由やコストを上回る便益について、十分説明するように求められていたところです。自律的労使関係制度については、その理念、目的をどのように考えるかも含め、多岐にわたる課題が存在し、引き続き慎重に検討する必要がある課題と認識しております」

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地方公務員の労使関係制度の問題点について

石井

地方公務員については、地方行政が二元代表制であるため、首長が決めた団体協約に基づく条例案が議会で否決されることが考えられます、この問題点をどう考えるのか、伊藤政務官に伺いました。

伊藤 忠彦 総務大臣政務官

「民主党政権下、平成23年の6月に国家公務員制度関連四法案提出を受けまして、地方公務員の労使関係制度についても関連法案が平成24年11月に国会に提出をされ、その中で、地方公共団体の長は、条例の改正を要する団体協約が締結されたときは、速やかに協約の内容を反映した条例案を議会に提出しなければならないとされています。この法案は既に廃案となっていますが、全国知事会を始めとする地方六団体の皆様方からは、「地方の特性や多様性が考慮されていない、いまだ議論が尽くされていない」等の見解が示され、「否決、そしてまた提案、否決と、こうしたことが続いたときにどんなリスクがあるのか」という問題も多く指摘をされたところです。地方公務員につきましても、国家公務員制度改革の動向を踏まえながら、御指摘をいただいた問題点を始め多岐にわたる課題について一つずつ慎重に検討していく必要があると考えております」

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地方公共団体の問題点について

石井

地方公共団体は、教育委員会、企業管理者など多くの任命機関が存在し、また、職員団体も職員数が過半に満たないもの、複数あるもの、職員団体のないところもあるなど多様な中で、労使交渉をどのように行い、協約をどのように締結するのか。この問題点をどう考えるのか、伊藤忠彦政務官に伺いました。

伊藤 忠彦 総務大臣政務官

「平成24年の法案の提出を控え、同年2月に全国知事会から、地方公共団体の規模の多様性、執行機関が分立していることに伴う懸念を意見表明されたと承知しております。労使双方の当事者の実態も様々であり、効率的な労使交渉の在り方について慎重な検討が必要との御指摘と理解しておりますが、こうしたことを十分留意をして、慎重に検討を重ねなければならないと考えております」

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消防職員の団結権について

石井

消防職員については東京消防庁が団結権を付与すべきでないと意見表明しています。全国消防長会、日本消防協会も同様の見解です。慎重に対処すべきではないか、その点を伊藤政務官に伺いました。

伊藤 忠彦 総務大臣政務官

「平成22年5月に、「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」で、全国市長会、全国町村会にヒアリングをしたところ、全国市長会からは約九割の市区長の、「地域の安全、安心の点で消防職員の団結権について課題、懸念がある」全国町村会からは「団結権の付与により、職員間の考え方の相違による不和が生じ、上司と部下の対抗関係をもたらし、良好な服務規律の維持が困難になると予想され、不安な面も感じる」との意見表明がございました。また、「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」で十二回にわたって検討を行い、平成22年12月に報告書を取りまとめた中で、団結権の回復に慎重な立場、積極的な立場の双方から意見が出され、最終報告で「委員間で必ずしも意見の一致を見たわけではない」とした上で、団結権のみ付与するか、団体交渉権を含めるかなどに応じて具体的に五つの制度提案をされたことも承知しております。また、平成24年の11月に「消防職員の労働基本権の回復を含む地方公務員等の一部改正に関する法律」の国会提出の際、市長会、町村会からたくさんの反対意見が表明をされました。この消防職員の団結につきましては、全国消防長会、日本消防協会からも、「指揮命令系統や職場のチームワークにゆがみをもたらすことが消防活動に支障を来す」「住民の消防に対する信頼や、消防団を始め関連機関との協働関係に支障を生ずるのではないか」「国民の安全、安心の確保に大きな影響を及ぼすおそれがある」等、反対の意見も寄せられています。御指摘の消防職員を含め、地方公務員の労働基本権の在り方は、国家公務員制度改革の動向を踏まえながら、慎重に検討していく必要があると考えます」

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地方公務員への制度の措置について

石井

地方公務員に対して整合性を持った制度にすることについては、様々な関係団体から反対あるいは慎重な判断を求める意見があり、地方は全く納得していないし、時の民主党政権は十分な説明責任を果たしていませんでした。この第12条に関する措置は、国家公務員に関する規定とはいえ、地方に及ぼす影響のことも考慮すれば、極めて慎重に検討がなされるべきと考えざるを得ません。稲田大臣の見解を伺いました。

稲田 朋美 内閣府特命担当大臣

「地方公務員への協約締結権付与に関しては、民主党政権下の平成24年11月に地方公務員の自律的労使関係制度の措置を盛り込んだ法案が提出をされ、当時石井議員は岡山県知事として、全国知事会始め地方六団体の意見の集約に御尽力をされました。「地方の特性や多様性が考慮されず、国家公務員の制度を基本とする設計となっている、いまだ議論が尽くされない」との意見が出されたことは承知をしております。また私の下で開催しました「今後の公務員制度改革の在り方に関する意見交換会」で有識者また実務者から、「地方公務員の制度に与える影響について十分配慮をすべき」との意見が多数出されたところです。自律的労使関係制度については多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えておりますが、その際、地方公務員制度に与える影響など地方自治体の懸念についても十分配慮しなければならないと考えております」

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地方を、熱くする。誠実に前向きに! 自民党 参議院議員 石井まさひろ